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eドリル トップページ > That's GAKU(2019年12月)

2019年12月

アコヤガイに起きた異変

 「アコヤガイ」は別名「真珠貝」ともいわれ、真珠の養殖に使われることで有名な貝。そのアコヤガイに、この夏、異変が起きた。
 愛媛県の宇和海沿岸は、日本一の真珠の産地。カゴに入れて海で育てていたアコヤガイの稚貝を真珠の養殖業者が引き上げてみると、カゴの中は見たこともない悲惨な状況。口を開けて死んでいる貝、中身がなくなっている貝、生きている貝がなかなか見つからない。
 7月下旬から被害が出始め、ほとんどの養殖業者で7〜8割の稚貝が死に、なかには全滅してしまったところもある。
 被害は愛媛だけでなく、真珠の生産量全国2位、3位の三重県(英虞湾)、長崎県(大村湾)でも同じような被害が出た。各地のアコヤガイに、いったい何が起こったのだろう。

アコヤガイの生態は?

真珠をつくるのは 貝殻の内側と同じ成分

 アコヤガイは、殻の長さが10cmほどの二枚貝。太平洋やインド洋の熱帯・亜熱帯の海に広く分布している。日本では、日本海側の男鹿半島以南、太平洋側の房総半島以南でみられる。
 干潮時に露出するくらいの浅瀬から水深20mほどの岩礁に生息している。足糸という粘着性の高い物質を分泌し、岩に体を固定させて生活する。エサは海中の植物プランクトン。卵からかえった数mmの稚貝は2年で成貝となり、寿命は12年前後。
 アコヤガイの貝殻の内側には、虹のように美しく光る真珠層がある。この真珠層は、外套膜という器官から分泌される真珠質(炭酸カルシウム)でつくられる。貝の中に異物が混入すると真珠質が分泌され、その異物を包み込むことがある。異物を核にして周りに何重にも真珠層が重なり、偶然できるのが天然の真珠だ。
 天然真珠は貴重で、宝石として珍重されたため、養殖によって人工的につくる方法が研究された。その方法が確立されたのは明治時代の日本で、ピース式と呼ばれる方法が現代でも使われている。真珠の芯になる核と2mmほどの外套膜の切片(ピース)を成貝の生殖巣に入れる手術をする。それを海で1〜2年育てると貝の中に真珠ができる。日本の海で育てられたアコヤガイの養殖真珠は、品質が高いと評価されてきた。

 

異変が起きた原因は?

海水温の高さとエサの不足が原因?

 アコヤガイの大量死の原因として、最初に疑われたのは貝の病気だった。じつは、1996年にも真珠の産地でアコヤガイの大量死が起こった。原因は赤変病という貝の感染症だった。
 このとき真珠養殖用のアコヤガイが不足し、中国産アコヤガイを使ったが、採れる真珠の品質は落ちてしまった。また20数年前と同じことが起こったのではないかと疑われたのだ。
 しかし、今回の原因は赤変病ではなかった。愛媛県の担当者は、詳しいことはわからないが、海水温の高さと、エサとなる植物プランクトンの不足が原因ではないかと発表した。海の環境変化以外に、大量死の原因は見つかっていない。
 温暖化による海水温の上昇は、さまざまな魚介類に影響を与えている。日本海のスルメイカは、2000年ごろから産卵場の水温が適温の18〜23度を上回るようになり、産卵数が減って不漁が続いている。また、人間が排出した二酸化炭素は海に吸収されて海水を酸化させるため、プランクトンの種類や量が変化して、海の生物に影響を及ぼす。
 国連の気候変動に関する政府間パネルは、海水温の上昇などが原因で、今世紀末までに海洋生物が最大20%、漁獲量は最大24%減少する恐れがあると発表したばかりだ。海の環境変化は、真珠をはぐくむ日本の海にも現れているのかもしれない。

 

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