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eドリル トップページ > That's GAKU(2017年5月)

2017年5月

氷に円い穴を開けて釣り糸を垂らす「ワカサギ」の穴釣りは、冬の湖沼の風物詩。天ぷらやフライにして丸ごと食べられるので料理にも人気がある。
長野県の「諏訪湖」も、ワカサギ釣りでにぎわう湖の一つ。その諏訪湖で、昨年7月下旬異変が起きた。湖全域の湖面に死んだワカサギが大量に浮いているのが発見されたのだ。岸にも死んだワカサギがたくさん打ち上げられた。数日間で回収されたワカサギは1t以上。およそ50万匹にあたる量だ。「諏訪湖のワカサギは全滅かもしれない……」。漁業関係者からは、そんな言葉も聞かれた。
1か月後の生息数調査で、ワカサギが例年の2割ほどは生き残っていることがわかり、全滅はまぬかれたが、過去に例がない大量死は、どんな原因で起こったのだろうか。

『股のぞき』で「イグ・ノーベル賞」!

ワカサギは、体長10〜15pに成長する冷水性の魚。もともと宍道湖、八郎潟、網走湖、霞ヶ浦などの海とつながっている湖や川を中心に、日本海側は島根県、太平洋側は千葉県以北に分布していた。
本来、ワカサギは、春に河川で卵からふ化し、下流の湖などで稚魚になり、夏になると沿岸の海へ出て成長する回遊魚。冬になると湖へ戻り、ふ化後満1年で成熟すると、湖から川を遡上して産卵する。満1年で産卵して死ぬものが多いが、湖によっては、2年目、3年目まで生きるものもいる。
しかし、水温や塩分などに幅広い適応力があり、水の濁りにも強いため、古くから日本全国の河川や湖沼に移殖されて繁殖した。海との往来が難しい湖では、湖や川で一生を過ごす。
実は諏訪湖のワカサギも、1915(大正4)年に霞ヶ浦から移入されて繁殖し、諏訪湖の漁業の中心になった。
漁業協同組合では、成魚のほかに放流用の卵を出荷している。毎年2〜5月に、諏訪湖に流入する8つの河川で、産卵のため遡上する親魚を捕獲し、卵と精子を人工授精して全国140もの湖沼へ出荷している。全国の湖沼に放流されるワカサギの多くが諏訪湖産なので、もし諏訪湖のワカサギが全滅していたら、全国の湖沼のワカサギにも大きな影響が出ていたはずだ。

 

『股のぞき』で「イグ・ノーベル賞」!

ワカサギが大量死した直接の原因は酸素不足で、呼吸ができずに死んだことがわかった。 
一般的に湖では、夏に表層の水が温められて比重が軽くなり、底層の冷たく比重の重い水と二層化して混ざり合わなくなる。そのため、底層の水は貧酸素状態になりやすい。
貧酸素とは、水中に溶けた酸素の量が魚の生息に影響が出るほど欠乏した状態のこと。冬、気温の低下で表層の水が冷やされ、雪どけ水などが流入すると、冷たく比重の重い水が湖底に沈み、対流が起きて二層の水が混ざり合う。これを「全循環」といい、深い湖底に多くの酸素が届けられる機会だ。諏訪湖では、数年前から底層に水生昆虫や貝が死滅した貧酸素水の層があった。例年、春に酸素が豊富な雪どけ水が流入するが、貧酸素は解消せず、昨年は暖冬で雪が少なく、雪どけ水も少量だった。湖水に入る酸素が少なかったことが大量死につながったという推測もある。また、大量死の直後、植物プランクトンが一斉に枯死し、水の透明度が急激に上がっていたこともわかっている。
今回、湖水全体が貧酸素になったメカニズムはまだ解明されていない。しかし、湖は非常に微妙なバランスの上に生態系が成り立っていて、気候の変動などでバランスが崩れると、生物の大量死などが起こりやすい環境だということがよくわかる。

 

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