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eドリル トップページ > That's GAKU(2016年1月)

2016年1月

自然に関する慣用句はたくさんある

 前回は、慣用句の使い方を紹介しました。おさらいしておくと、二語以上が結びつき、全体で特定の意味を表す言葉を「慣用句」というのでした。
 体の一部が使われた慣用句を取り上げた前回に引き続き、今回は、自然に関する慣用句を取り上げてみましょう。四季折々の自然と共に生きることを大切にしてきた日本には、そうした慣用句がたくさんあります。
 「水」ひとつとっても、「水を得た魚のよう」「水をあける」「水をさす」など、すぐにいくつか思い浮かぶでしょう。
 たとえば、けんかのあとに、「お互い水に流そう」などと言います。これは、「争いごとをなかったことにしよう」という意味です。山が多い日本は川の流れが速く、目にしたくないものがあったとしても、水の勢いで流されていきます。昔の人はその様子を見て、「争いごとは水の流れに乗せて流し、忘れて前を向こう」と考えたのでしょう。
 「水に流す」という慣用句が生まれたのは、日本に雨が多く、豊かで美しい森林と水が身近にあったからだと考えられます。

同じ慣用句でも国によって意味が違う!?

 また、「湯水のように使う」という慣用句も、水が豊富な日本ならではの表現で、「惜しげもなく使う」ことを意味します。アラブ諸国では、「湯水のように使う」は「大切に使う」ことを意味するそうです。水が貴重な地域では、正反対の意味で使われるのですね。
 自然に関する慣用句は、人々がどのように自然と向き合ってきたかを知る手がかりにもなります。ふさわしい場面で慣用句をうまく使っていきましょう。
 では、次のページから、慣用句を使ってわかりやすく表現した例を見ていきましょう。今回は「剣道の大会」についての文章をもとに考えていきます。

慣用句を使わない文章(1)

 父は「強そうだぞ」と言った。けれどぼくは、「これなら勝てる」と思っていた

解決策

「馬耳東風」を使ってみよう。

 「ぼくは、『これなら勝てる』と思っていた」でも、「ぼく」の思いは伝わります。ですが、その程度を表現するために「馬耳東風」という慣用句を加えてみましょう。
 「馬耳東風」とは、「人の意見などを気にもとめず、聞き流すこと」です。これで、「ぼく」が父の意見をまるで聞き入れなかったことがよく伝わるようになります。

慣用句を使った文章(1)

 父は「強そうだぞ」と言った。けれど、ぼくには馬耳東風で、「これなら勝てる」と思っていた

慣用句を使わない文章(2)

 兄の攻撃を佐藤さんは軽く受け流す

解決策

「柳に風」を使ってみよう。

 佐藤さんの軽やかな動きを印象づけるために、「柳に風」という慣用句を使いましょう。意味は「逆らわずに受け流すこと」です。
 細くて長い柳の枝は、風が吹けば大きく揺れてしまいます。けれど、いくら揺れても元に戻るしなやかさがあります。これで、佐藤さんのしなやかな強さが目に浮かぶような表現になります。

慣用句を使った文章(2)

 兄の攻撃を佐藤さんは柳に風と受け流す

慣用句を使わない文章(3)

 美しい技に、会場は一瞬静まり返り、その直後、歓声に包まれた。

解決策

「水を打ったよう」を使ってみよう。

 「水」を使った多くの慣用句の中から、ここでは「水を打ったよう」を使ってみましょう。打ち水とは、道や庭に水をまいてほこりが舞い上がるのを防ぐことで、夏には涼を得る効果もあります。古来は神様が通る道を清める意味で行われていたようです。そこから、打ち水が静かなイメージにつながり、「水を打ったよう」という表現が生まれたのかもしれません。
 この文章には、剣道が強いお年寄りが登場します。「年寄りの冷や水」などという慣用句もありますが、今回の場合は当てはまらないようですね。

慣用句を使った文章(3)

 美しい技に、会場は一瞬水を打ったように静まり返り、その直後、歓声に包まれた。

慣用句を使わない文章(4)

 「あんなに年をとっているのに」とぼくが不満そうに言うと、「人を見かけで判断するものじゃない」と、父が怒った

解決策

「雷が落ちる」を使ってみよう。

 「父が怒った」で叱られたことはわかります。けれど、どのように叱られたかまではわかりません。ここでは「雷が落ちた」としてみましょう。
 「雷が落ちる」は、「ひどくどなりつけること」です。これで父が激しく怒っていたことが表現できます。また、雷が落ちると、大きな音や稲光に驚いてびくっとしますね。そのように、父の怒りに触れ、縮こまってしまった「ぼく」の姿までもが読む人に伝わります。

慣用句を使った文章(4)

 「あんなに年をとっているのに」とぼくが不満そうに言うと、「人を見かけで判断するものじゃない」と、父の雷が落ちた

慣用句は場面を選んで効果的に使おう

 では、慣用句を使ってわかりやすくなった文章を読んでみましょう。

 ある日、ぼくは父と一緒に、兄が出場する剣道の大会を見に行った。それは、十六歳以上であれば誰でも出場できる大会だった。兄の対戦相手の佐藤さんは、とても小柄で髪の白いお年寄りだった。「おじいさんじゃないか」と言うぼくに、父は「強そうだぞ」と言った。けれど、ぼくには馬耳東風で、「これなら勝てる」と思っていた
 兄と佐藤さんの試合が始まった。兄の攻撃を佐藤さんは柳に風と受け流す。少しして佐藤さんが踏み込んだ。派手ではなかったが、その動きは驚くほど速く、兄はあっという間に面を打たれて負けてしまった。美しい技に、会場は一瞬水を打ったように静まり返り、その直後、歓声に包まれた
 「あんなに年をとっているのに」とぼくが不満そうに言うと、「人を見かけで判断するものじゃない」と、父の雷が落ちた。そして、先入観を持って相手を見ることがいかによくないか、父はゆっくりと話してくれた。
 あれからぼくは、剣道以外でも、人を見かけで判断しないよう心がけている。そのおかげで、それまで話したことのなかった人と友人になれたし、剣道でも油断して負けることがなくなった。佐藤さんと兄の試合は、ぼくにとって忘れられないものとなった。

 二回にわたり、慣用句を使ってわかりやすく表現する方法を考えてきました。短い言葉でも、その場の雰囲気まで伝えることができる慣用句は便利で楽しいものです。ただ、使いすぎてはその効果も薄れてしまいます。印象づけたい場面を選んで使い、わかりやすい文章を書いていきましょう。

覚えておこう!

 自然に関する慣用句の例をあげてみます。ここに紹介した以外にもたくさんありますから、調べてみましょう。正しく意味を覚えて使えるようになれば、表現がさらに豊かになりますよ。

「火に油を注ぐ」勢いのあるものに、さらに勢いを加えること。
(例)彼女を落ち着かせようとしたけれど、かえって火に油を注ぐことになってしまった。
「氷山の一角」表面に現れたものが、大きなものの一部でしかないことのたとえ。
(例)その事件は氷山の一角にすぎない。
「雲泥の差」天と地ほどのへだたり。大変なちがい。
(例)考えるのと実行するのとでは、雲泥の差がある。

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